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熱海×アートのご紹介

熱海×アートのご紹介

アートで着想を得て広げるビジネスの可能性
レトロな街並みに趣向凝らした美術館 熱海の新たな価値2024.1031

レトロでありながらモダン。古き良き伝統と変化を続ける新しさの融合にも、熱海の魅力は表れている。

そして、その特徴はビジネスの可能性も広げている。

熱海の街並みや個性豊かな美術館には癒しや気分転換、さらには新規事業や商品開発のヒントが詰まっている。

■熱海で高まるアート熱 クリエーターも好むレトロ感

観光地として再起した熱海には飲食店をはじめ、新しい店が増えている。一方、路地裏には昭和を感じさせるレトロな街並みが残っている。懐かしさと新しさが調和する熱海は年齢を問わず、訪れる人を魅了する。

 

レトロな雰囲気を求め、熱海には観光客だけではなくクリエイターも好んで訪れている。首都圏のオフィスから離れ、熱海のまちを散策するとビジネスにおいても新たなアイデアが浮かんでくる。

 

昭和レトロブームの追い風もあり、熱海ではクリエイティブやアートといったキーワードでも注目が高まっている。熱海の魅力をアートで再発見することをテーマに2021年から始まった「PROJECT ATAMI」は、参加アーティストの作品を市内の宿泊施設や飲食店に展示するなど、日常にアートを加える取り組みを進めている。

 

 

熱海を代表する「MOA美術館」 美術品+αの楽しみを提供

 

MOA美術館

 

熱海市内には美術館が多い。その中でも、熱海の芸術を語る上で真っ先に挙げられるのが「MOA美術館」だろう。1982年に開館した美術館で、国宝、重要文化財、重要美術品を含む3500点以上が所蔵されている。11点をゆっくりと鑑賞できるよう、広々としたスペースにあえて多くの作品を展示していないという。その分、作品を年に数回入れ替えて、何度来ても飽きない演出をしている。

 

展示スペースには細部までこだわりが詰まっている。展示ケースは反射を抑えた透明度の高い特殊なガラス、壁に黒漆喰を使うことで、ガラスの存在を極限までなくしている。床は人が歩いても音が鳴らない構造で、作品の照明も目が疲れない工夫を凝らしている。展示室の扉も工芸品で一切の妥協がない。

 

 

 

MOA美術館の特徴は、美術品+αの楽しみを提供するところにもある。DX推進チームの上榁典子さんは「美術品に詳しくない方でも楽しめて満足いただけるコンテンツでいっぱいです」と力を込める。

 

館内には「能楽堂」や、世界最大級の万華鏡を投影した「円形ホール」。

 

 

さらに、目の前に海が広がる絶景や四季を感じられる広大な庭園も堪能できる。MOA美術館は海抜250メートルの丘陵地に位置するため、初島や伊豆大島が浮かぶ相模灘など雄大な景色を見渡せる。

 

 

 

■リフレッシュだけではない 「アート」から得るインスピレーション

食も充実している。庭園には季節の和菓子と抹茶を味わえる茶室があり、和食やそばを提供する飲食店は素材にも見た目の美しさにもこだわった料理で来店客をもてなす。

 

 

 

美術館の中には、鎧塚俊彦氏プロデュースのカフェ・スイーツ店も入っている。景色を眺めながら仕事をしたい人にお勧めなのは「the cafe」。オーガニックコーヒーとパソコンを手に席についている人もいる。美術館はフリーWiFi完備している。

 

 

「オーシャンビューや季節で移り変わる景色は、普段都会で仕事している方にとってはリフレッシュになると思います。首都圏からすぐの距離で非日常を味わえるところが、この美術館の魅力だと思います」

 

 

 

企業研修の一環で熱海を訪れた際、デスクに向かうだけではなく、美術館の鑑賞を組み合わせれば、展示や景色からインスピレーションを受けたり、館内の工夫やこだわりから新規事業や商品開発のヒントを得たりする好機となる。

 

 

「熱海山口美術館」は個性派 観賞+体験が特徴

MOA美術館が歴史のある正統派の美術館なのに対し、車で10分ほどの距離にある「熱海山口美術館」は個性的で勢いがある。202012月にオープンした熱海山口美術館はオーナー・山口伸廣氏のコレクションを展示している私設の美術館。1人の資産家が集めた2000点以上の作品を入れ替えながら、常時約200点を展示している。

 

 

 

まず、目を引くのは美術館の外観。賃貸マンションを山口氏が買い取り、1階と2階をスタッフが展示スペースに改装。3階から5階までは今も賃貸で、実際に住民がいる。展示室はマンションらしさを残したまま活用し、それぞれの部屋に「西洋美術」や「人物」などテーマが設けられている。1人のオーナーによるコレクションを展示しているため個性が強く、バラエティに富んだ内容となっている。ただ、そこが他の美術館にはない長所になっていると支配人の江川公平さんは語る。

 

 

 

「陶芸や現代アートなど、部屋ごとに色んなジャンルがあるので、誰でもどれか1つ以上は興味を持つジャンルがあると思います。お客さまは展示品の購入が可能で、オーナーが買ってきた作品を新たに展示しているので、来館する度に展示が変わるおもしろさもあります。熱海には私たちのような個性的な美術館もあるので、訪れる方々の選択は幅広いと思います」

 

熱海山口美術館の最大の特徴は「体験」にある。1階に入っているカフェで飲み物を注文すると、真っ白な皿も手渡される。ペンで皿に好きな絵やデザインを描き、5分ほど熱を加えてオリジナルの皿を完成させる絵付け体験ができる。さらに、飲み物に抹茶を選ぶと、人間国宝の作家による茶器で抹茶が提供される。江川さんが体験を重視する意図を説明する。

 

 

 

「人間国宝の作品に触れる機会は、なかなかありません。でも、器は使うものなので、形状や飲んだ時の口触りなど、触ることによって得られる情報が多いんです。見るだけではない『体験』を通じてその作品の価値を知ってもらいたいと考えています」

 

■作品の知識は不要 自分と対話してキャリアを考える時間に

展示室にも、体験できる作品が並んでいる。例えば、岡本太郎が手掛けた「坐ることを拒否する椅子」は来館者が座れるようになっている。座り心地の悪い椅子に腰かけることで、「何かに生き生きと取り組む時は、椅子に座って落ち着いているようでは駄目」という作者のメッセージに直接触れられる。

 

 

江川さんは、無縁に思われがちなアートとビジネスの融合にも可能性を感じている。美術品に触れる時間は自分を知ったり、見つめ直したりする機会になると指摘する。

 

「アーティストや作品の知識はなくても良いと思っています。作品を見て気持ちがどのように動くのか、自分と対話する楽しみが美術館にはあります。現状のままで良いのか、今後どうなっていきたいのかを自問自答する時間は、どんな仕事に就いている方にも大切だと感じています」

 

熱海山口美術館   

 

日常から離れ、一度立ち止まって今の立ち位置やキャリアを考える。数字では測れない、感情を揺れ動かすアートには仕事に対する姿勢や考え方を前向きに変える力がある。

 

MOA美術館と熱海山口美術館には共通点がある。若手アーティストの支援や育成の一環として、彼らの作品を披露したり、販売したりする場を設けることがある。また、作品展も開催して名前を広く知ってもらうきっかけをつくっている。地元の子どもたちが美術に触れる機会も創出し、熱海に芸術を根付かせ、発展させようとしている。

 

レトロな雰囲気を生かしたまちづくりに趣向を凝らした美術館。アートのまちとしても存在感を増している熱海は企業の課題解決や新規事業、人材育成やモチベーション向上など、ビジネス利用の価値も高い。

 

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